【大雨】「家にいたほうがいいと」避難しなかった…重なった3つの“想定外” 土石流で1人死亡 福岡県

2023年07月13日


10日に記録的大雨の影響で大きな被害に見舞われた福岡県では、12日にも再び激しい雨が降りました。

久留米市では一部地域に「緊急安全確保」が発令され、土石流に14人が巻き込まれ1人が死亡した田主丸町竹野地区にも緊張が走りました。

今回、なぜ大規模な土砂災害が起きたのか?

過去を教訓に防ぐことはできなかったのか?

そこには「想定外の連鎖」がありました。

7月10日、九州北部で発生した「線状降水帯」による大雨で、大きな被害が出た福岡県内。

確認された死者は、あわせて5人にのぼっています。

本格的な復旧作業が待たれる中、再び被災地には激しい雨が降りました。

今回の大雨で国道が崩落し、いまだ村内の一部が孤立した状態になっている東峰村。

再び降り出した雨で緊張が走ります。

◆避難所に避難した人
「嫌になる。朝から晩まで雨が降る度に逃げる」

◆避難所に避難した人
「家に戻りたいが、空とにらめっこ」

一方、大規模な土石流が発生した久留米市田主丸町でも…

◆川崎キャスター
「今、稲光がしました。土石流の現場ですが雷の轟音が鳴り響いています。そして、時折、雨も降っています」

土石流による傷痕がいまだ生々しく残る竹野地区。

12日も朝早くから土砂や岩などの撤去作業が行われていましたが、雨が降り始めたため、地域住民は早めに判断し身の安全を確保します。

◆被災した人
「また、土砂とかが来ると危ないので、いったん避難している。(撤去作業が)なかなか進まない。雨だからどうしようもない」

被災地に再び降った激しい雨。

福岡県と気象台は、12日昼すぎ、久留米市・八女市・うきは市・朝倉市・東峰村に「土砂災害警戒情報」を発表。

また久留米市は、土砂災害がさらに発生する危険性が高まったとして、市内の5700世帯余り、約1万3500人を対象に警戒レベルが最も高いレベル5の「緊急安全確保」を発令しました。

久留米市役所を訪れた福岡県の服部知事に対し、原口市長は、「緊急安全確保」を出した理由についてこう語りました。

◆久留米市・原口市長
「前日に記者会見で『避難してください』と言った。しかし、ここの住民の方は、『80年~100年(大きな災害は)1回もない』と。僕たち(住民)は大丈夫だと思った。その2時間前も『避難してください』と出した。(住民は)『それでもどうにかうちは大丈夫じゃないか』と言われた。なので、きょうは、警戒レべル4だったが、警戒レベル5(にした)」

いまだ生々しい被害の傷痕。

今回の災害を防ぐことはできなかったのでしょうか。

土砂災害への警戒が高まる久留米市田主丸町の竹野地区。

10日午前9時半ごろ、大規模な土石流が発生しました。

Q.発生したときの状況は?
◆竹野地区の住民
「音はゴーガチャガチャっていう感じだった。一瞬です」

◆竹野地区の住民
「朝寝てたら音で目が覚めて、窓を開けて外を見たら、死ぬなと思った」

大雨によって発生した土石流などで、少なくとも住宅7棟、合わせて14人が土砂に飲み込まれ、1人が死亡しました。

なぜ、この地区で大規模な土石流が発生し、被害が拡大したのか?

そこには、『想定外の連鎖』がありました。

その1つ目の想定外が、半日ほど前に出される『線状降水帯の予測』がなかったことです。

福岡県に線状降水帯の『発生』情報が出されたのは午前3時9分、その後、午前7時30分に久留米市へ『大雨特別警報』が出されました。

しかし今回、『線状降水帯の予測』の発表はありませんでした。

<10日、福岡管区気象台と九州地方整備局の会見>
◆気象防災情報調整官 堤雅也さん
「半日前の線状降水帯の発生予測情報ですけれども、未明から明け方をターゲットとして発生するのではないかということで、きのう(9日)の夕方発表できればということで検討していましたが、予測まで至らなかったので発表することができなかった」

線状降水帯は、水蒸気の量、大気の安定度、風など複数の要素が複雑に関係しており、正確な予測が難しいといいます。

線状降水帯予測が発表されないまま、結局、久留米市に「避難指示」が出されたのは午前3時45分。

多くの人が寝ている時間帯となりました。

そして2つ目の想定外は、これまでに経験したことのない雨が降ったことです。

今回、土石流の被害を受けた久留米市田主丸町竹野地区は、耳納山の麓です。

10日午前までの耳納山の24時間雨量は402.5ミリ。

観測史上最大の雨を記録しました。

1カ月に降る雨が1日で降ったことになります。

専門家は…

◆福岡大学 地盤工学 村上哲 教授
「地面の中に入った水が溜まっていくが、それが長ければ長いほど、降り続ければ降り続くほど、土にたくさん水が入っていく。結果、すべりやすくなるのが土砂災害の一番の要因」

さらに3つ目の想定外は…

◆竹野地区の住民
「防災から外れるんですよ」

Q.土砂災害警戒区域?
◆竹野地区の住民
「じゃないんですよ」

土砂崩れの被害を受けた久留米市田主丸町の竹野地区が、土砂災害警戒区域の外だったことです。

こちらは、久留米市の土砂災害ハザードマップを表示したものです。

赤色が特別警戒区域、黄色が警戒区域となります。

そこに今回、土砂災害が発生した地域を重ねると、警戒区域外の場所が大きな被害にあっていることが分かります。

◆竹野地区の住民
「この辺はレッドゾーンでもないし、イエローゾーンでもないから。電気もつくし、水道も来ていたから、家にいた方がいいなと思って」

多くの住民が、警戒区域に入っていなかったため避難しなかったといいます。

久留米市の原口市長は…

Q.今回の土砂災害が起きた通り道だけ土砂災害警戒区域から外れているのは認識していた?
◆久留米市 原口新五 市長
「(認識)していました」

Q.対象外だったから、住民の方は油断して逃げなかった方がいたが、どう受け止める?
◆久留米市 原口新五 市長
「もう一度反省をして、検証し直して、今から先は『想定外』ではなくて、全てのところを避難区域にしなければいけない」

「想定外の連鎖」から起きた今回の土砂災害。

今後どのように注意すべきなのでしょうか?

◆福岡大学 地盤工学 村上哲 教授
「今回の土石流の被災のケースを踏まえると、ゾーン以外の所も必ずしも安全ではないことがある。早期の避難を心がけていただくことが大切になる」

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