工藤会トップ死刑判決から1年(2)現役組員「関東では食えている」 野村被告の影響力と組織の不穏な動き

2022年08月24日

特定危険指定暴力団工藤会のトップに死刑判決が言い渡されて、2022年8月24日で1年。

現在の工藤会、警察の工藤会対策について取材しました。

<福岡拘置所 2022年7月>

拘置所に集まる黒服の男たち。

彼らは工藤会系の組員など約30人。

「工藤会」ナンバーとも言われている「8」並びの車が駐車場に停車するほか、黒光りする高級車が入っていく様子も。

◆警察
「きょうは何の用ですか?」

◆組員
「面会です面会。よそから面会に来られるから」

この日は、東京に本部を置く指定暴力団「住吉会」の幹部が、拘置所に収容される野村悟被告に接見に訪れ、工藤会系組員はその来賓対応をしていたと言います。

死刑の一審判決が出てもなお、野村被告との親睦を深めようとする他の暴力団。

未だ野村被告が与える影響力は陰りを見せていません。

工藤会の総裁・野村被告に死刑、ナンバー2の田上被告に無期懲役が言い渡された一審判決から1年。

野村被告は法廷からの去り際にこんな捨て台詞を残しました。

「公正な裁判をお願いしたのに全然公正やないね。全部推認、推認、推認、こんな裁判があるか!生涯このこと後悔するよ!」

◆福岡県警 田中伸浩 暴力団対策部長
「野村悟被告が裁判長に向かって発言したように凶悪性・粗暴性、その本質は変わっていない。弱体化しているけれども未だ組織としては機能していると捉えているので、完全に壊滅するまで持って行くことが必要」

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<現役組員が語る工藤会の現状>

工藤会の現状はどうなっているのか。

ペン取材のみを条件に現役組員から話を聞くことができました。

◆工藤会 現役組員
「工藤会の現状ですが厳しいです。裁判費用のため工藤会の会費が上がっているのでキツイと思います。シノギも楽ではないです」

組員によると、野村被告らの裁判費用捻出のため、組員が毎月工藤会に納める会費の金額があがっているといいます。

その上、組員たちが収入を得る活動、いわゆる「シノギ」も警察の取り締まりなどで困難に。

ところが、この状況は福岡に限った話だといいます。

◆工藤会 現役組員
「九州と違って関東にいる工藤会は大丈夫です。完全に九州の工藤会とはムード違うと思いますよ。他の組織とシノギがぶつかっても工藤会とわかれば勝手に引いてくれるので食えています」

県警が野村被告らの逮捕に踏み切った「頂上作戦」とちょうど同じ時期の2014年頃、工藤会の傘下組織「長谷川組」が千葉県を拠点に関東へ本格進出。

地元の人間を吸収し勢力を維持したまま、現在も工藤会の資金源活動を活発に行っていると見られています。

2022年7月には「長谷川組」の組員の男が男子大学生を車に監禁し、高級腕時計などを奪った疑いで警視庁に逮捕されました。

組員が大学生に放ったという脅し文句は、衰退する工藤会のイメージを覆すものでした。

◆逮捕された「長谷川組」組員
“工藤会がどんな組織か知っているのか?殺されたいのか?” “工藤会の仕事を手伝え”

◆工藤会 現役組員
「関東の工藤会は何かあったら100人集められる組織力を持っています。若い子も入って来ています」

またシノギの活動に一役買っているのが、痕跡の残らないロシア製の無料通信アプリ「テレグラム」だと明かしました。

◆工藤会 現役組員
「会合は工藤会執行部の数人で伝達事項などを話し合い、末端の組員にはテレグラムを使って伝達します。伝達内容は自動消去できるように設定させられています」

なぜ未だ工藤会を離脱せず、警察の目をかいくぐる暮らしを選ぶのか?

◆工藤会 現役組員
「工藤会を今離れる訳にはいかないです。総裁と会長が無実と言えば無実を信じるしかありません。私たちは、総裁と会長が社会復帰されるまで代紋を守るだけです」

取材に応じた現役組員は野村被告らの社会復帰を望んでいました。

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<福岡県警 工藤会対策の現状>

工藤会組員の離脱者数は、2022年に入り6月末時点で未だ5人。

このペースでいけば、頂上作戦以降、年間の離脱者数は過去最低が見込まれます。

死刑判決後も散り散りにならないばかりか、一部組織は精力的にシノギを行っているとみられる工藤会。

しかし、福岡県警も捜査の手を緩めることはありません。

2022年7月、県警は10年前の不動産会社社長殺人未遂事件で、地道な捜査を重ね工藤会系の組員らを逮捕しました。

また工藤会対策には「検挙」と両輪をなす重要な取組みがあります。

1人の男性が向かう先は、県警本部内の「組織犯罪対策課社会復帰アドバイザー室」。

組員などの離脱・就労支援を担う現場です。

これまで何度も就労支援に携わっている社会復帰アドバイザーの山田さん(仮称)。

電話の相手は、工藤会・元組員の50代男性。

野村被告の死刑判決後、警察の就労支援を受け運送業に身を置きます。

◆電話でのやりとり
山田「もしもし、@@です」
元組員「すみません」

山田「就労してから9ヵ月くらいたいね どんな風 仕事は?」
元組員「そうですね、やっぱり(組員だった)以前は労力に対して対価というものがありませんでしたし、身体を動かした分だけお金が出ていく。今は身体を動かした分だけ対価としてのお金が入ってくるので安定してますし、おかげさまでという感じで感謝しております」

山田「そげん思ってくれるんならこっちとしても嬉しい。大型免許とったという話やったけど…」
元組員「社長から『大型でもとってこいや』ということで。資格が1つ増えました」

山田「費用はどげんした?」
元組員「会社負担で」

山田「離脱してから組関係者から連絡はありよらんや?」
元組員「全くないですね。元の携帯電話も解約して新しい電話に変えたので、関係者の電話番号も全く知りませんし」

山田「街中でばったり会ったりとかはないや?」
元組員「もうそんな時間ないですよ」

組員らが心の奥底に抱える今後の工藤会への不安をいかにすくい取るかが離脱・就労支援の鍵だと山田さんは話します。

◆山田さん
Q.まだ(就労が)危ないなと思う時は?
「あります。正直言って『本気で就労希望しているのかな』という人間もいました。小さな所を色々話を聞いていくと本心が出てくる部分がある。その話を聞いて『本気で就労支援を考えるように』と説得しています」

暴力団捜査に長年従事してきた県警の暴力団対策のトップは「死刑判決」に慢心することはありません。

◆福岡県警 田中伸浩 暴力団対策部長
「これは確定判決ではございません。現状一番大切なことは確定判決がおりるまでにいかに弱体化を進め壊滅まで持って行くのかということ。今はまだ道半ばということで、今まで以上に工藤会対策を推進していくことが必要」

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